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「Topical acne treatments in Europe」

本年4月より尋常性ざ瘡に対する
過酸化ベンゾイルゲル(ベピオゲル®)が上市されます。

ヨーロッパでの過酸化ベンゾイル(BPO)ゲルを含めた外用剤のreviewを
行った論文中の、特に過酸化ベンゾイルゲルの記載を中心に紹介します。

過酸化ベンゾイルは親油性物質です。
皮膚内では、脂腺系毛包内に達し、フリーラジカル、安息香酸を
releaseし、細菌の蛋白を酸化します。
過酸化ベンゾイルは抗炎症作用と面皰融解作用を有し、
皮膚表面や毛包内のPropionibacterium acnes( P. acnes)の数を減少させます。
3か月の外用治療では、クリンダマイシンと同程度に炎症性皮疹の数が減少し、
非炎症性皮疹は30%減少したと報告されています。
エリスロマイシンやアダパレンと比較した場合にも同様の結果が得られています。
副作用は紅斑や刺激感、落屑等です。
過酸化ベンゾイルは薬剤耐性を誘導しないとされています。

過酸化ベンゾイルと外用抗菌剤とのcombinationも述べられています。
クリンダマイシンと過酸化ベンゾイルとのcombinationでは
それぞれを単独で使用した場合より炎症、重症度がより改善します。
また薬剤耐性のP. acnesの発生を減少させると報告されています。

(Leccia MT et al. Topical acne treatments in Europe and
the issue of antimicrobial resistance. J Eur Acad Dermatol Venereol. Epub.
2015 )

本邦での第Ⅱ/Ⅲ相の臨床試験の報告では、
対象を「顔面に11個以上40個以下の炎症性皮疹と20個以上100個以下の非炎症性皮疹を
有し、結節/嚢腫が2個以下の尋常性ざ瘡患者」としています。

※皮疹の症状の定義
●炎症性皮疹
・紅色皮疹(直径1cmまでの紅色の隆起性の毛孔一致性丘疹)
・膿疱(紅色丘疹の頂点に黄色の膿を有するものから、全体が黄白色を
呈するものまでみられ、時に圧痛を伴う) 
●非炎症性皮疹  
・閉鎖面皰(肉眼的に毛孔が開口せず、皮膚内の黄白色の小結節として
認められる)  
・開放面皰(毛孔が開口し、そこに黒褐色の物質が点状に充満して
みられる)
●結節/嚢腫(直径1cm以上の境界明瞭なしこりである)

2.5%過酸化ベンゾイルゲルを12週間1日1回の外用すると、炎症性皮疹は72.7%、
非炎症性皮疹は56.5%の減少率であり、プラセボ外用と比較しても減少率は
有意に大きく、臨床的に意義があったと結論されています。
外用2週後の炎症性皮疹の減少率の中央値は、2.5%過酸化ベンゾイルゲル群36.4%、
プラセボ群16.4%でした。外用2週後の非炎症性皮疹の減少率の中央値は、
2.5%過酸化ベンゾイルゲル群17.4%、プラセボ群8.3%でした。
すなわち2.5%過酸化ベンゾイルゲルは外用2週後から炎症性皮疹、非炎症性皮疹とも
減少させることが確認されました。

(川島 眞他:過酸化ベンゾイルゲルの尋常性痤瘡を対象とした
第II/III相臨床試験―プラセボ対照、ランダム化、二重盲検、並行群間比較、
多施設共同試験―.臨床医薬30 : 651-668、2014)

また52週の長期投与時の安全性および有効性評価の報告では、試験期間中、
皮疹数の減少が維持されたことから過酸化ベンゾイルゲルはP.acnesの耐性化を
誘導することなく、長期にわたって効果が発揮されると述べられています。
同報告内では治療開始日のP. acnesに対するMICを比較されています。
エリスロマイシンやクリンダマイシンのMICが128μg/mLを越える高い菌株が
見られたことは抗菌薬耐性の菌株が増加している可能性を示唆しています。
ただし薬剤感受性にかかわらず過酸化ベンゾイルゲルの効果が見られたと
報告されています。
また皮膚剥脱や刺激感、紅斑等の副作用は、「過酸化ベンゾイルゲル単独」よりも
「過酸化ベンゾイルゲルとアダパレン外用剤を併用」した場合の方が
多く見られました。
ただし「アダパレン外用剤単独」で長期投与した時の
副作用発現率との比較し、その発生率が多くなかったことから、
「過酸化ベンゾイルゲルとアダパレン外用剤を併用」したときと
「アダパレン外用剤単独」使用した場合の有害事象発現は同程度
であろう考えられています。

(川島 眞他:尋常性痤瘡患者での過酸化ベンゾイルゲル長期投与時(52週間)の
安全性および有効性評価―非盲検、ランダム化、多施設共同第III相臨床試験―.
臨床医薬30:669-689、2014)

本邦における過酸化ベンゾイルゲルと抗菌薬の合剤の治験結果も
British Journal of Dermatologyに掲載されています。

(Kawashima M et al: Clindamycin phosphate 1.2%-benzoyl peroxide 3.0%
fixed-dose combination gel has an effective and acceptable
safety and tolerability profile for the treatment of acne vulgaris
in Japanese patients: a phase III, multicentre, randomised,
single-blinded, active-controlled, parallel-group study.
Br J Dermatol 172: 494-503, 2015 )

過酸化ベンゾイルゲルには漂白作用もあり、外用時には毛髪や衣服に
付着しない等の注意事項があります。
4月以降の発売ですが、適切な外用方法、留意する副作用などに
種々気を配りながら治療を継続する必要があります。