2015/05/20
Nipple部(乳頭部)の湿疹性病変はアトピー性皮膚炎患者さんの
胸部にみられる病変として特徴的です。
ただしアトピー性皮膚炎を有しない患者さんでもnippleの湿疹が見られることがあります。
アトピー性皮膚炎の有無によるnippleの湿疹性病変の病理組織学的差異を
検討した論文を紹介します。
(Hyo Sang Song et al: Nipple Eczema, an Indicative Manifestation of
Atopic Dermatitis? A Clinical, Histological, and Immunohistochemical
Study. Am J Dermatopathol 37: 284–288. 2015)
Nipple部の湿疹性病変の病理組織標本43例をアトピー性皮膚炎合併群(AD合併群)12例と
アトピー性皮膚炎非合併群(AD非合併群)43例に分けて炎症細胞浸潤の程度、
interleukin-4, interleukin-13, CD4, CD8の免疫組織学的染色発現の程度を検討しました。
炎症細胞浸潤は血管周囲のリンパ球が主体で少数の好酸球を伴い、
その程度はAD合併群、AD非合併群で有意差はありませんでした。
Interleukin-4は表皮全層、真皮炎症細胞浸潤に陽性でした。
その程度はAD合併群、AD非合併群で有意差はありませんでした。
Interleukin-13はどちらの群も真皮炎症細胞浸潤に発現していましたが、
その程度に有意差はみられませんでした。
CD4陽性リンパ球、CD8陽性リンパ球はいずれも真皮血管周囲に見られましたが、
いずれもAD合併群、AD非合併群で有意差はありませんでした。
今回のnipple部の湿疹性病変の病理組織、免疫組織学的検討ではAD合併群、
AD非合併群で明らかな差はありませんでした。
Nippleの湿疹性病変があることは必ずしもアトピー性皮膚炎であることを
示唆するわけではないと考えらえました。
ただし、いずれの群も同様の形態像を呈していることからアトピー性皮膚炎の診断基準を
満たしていない湿疹性病変の患者さんが将来的にアトピー性皮膚炎の症状を
合併する可能性があり、十分モニターする必要性がある、と本論文では述べられています。
病理組織学的に湿疹性病変と診断した際には、単なる非特異的変化と結論づけず、
そのetiologyを検討する努力を行ってはならないとあらためて感じました。