2016/08/10
皮膚に関連した新興感染症の総説がJAADに掲載されました。
ウイルス、細菌感染症の内容を紹介します。
Zeena Y. Nawas, Yun Tong, Ramya Kollipara, Andrew J. Peranteau,
Laila Woc-Colburn, Albert C. Yan, Omar Lupi, Stephen K. Tyring.
Emerging infectious diseases with cutaneous manifestations
Viral and bacterial infections : J Am Acad Dermatol 2016; 75: 1-16
この総説で取り上げられている疾患は以下の通りです。
●ウイルス疾患
エボラ出血熱
デング熱
チクングンヤ熱
ジカ熱
Trichodysplasia spinulosa
麻疹
手足口病(エンテロウイルス71、コクサッキーウイルス6による)
●細菌感染症
類鼻疽
Acinetobacter baumanniieassociated infection
ライムボレリア症
リケッチア感染症
Cat flea rickettsiosis
Tick-borne lymphadenopathy
Rocky Mountain spotted fever
Ehrlichiosis
蚊が媒介するデング熱、チクングンヤ熱、ジカ熱は日本でも注目されています。
特にデング熱は代々木公園周辺で流行したことで話題になりました。
その3疾患の皮膚症状です。
○デング熱
解熱の時期に一致して皮疹が出現することが多いと言われています。
皮膚症状は麻疹様発疹であり時に搔痒を伴い落屑を伴いながら治癒します。
肘、膝関節周囲から出現し、四肢、体幹へ拡大します。
時に点状出血、びまん性の紅斑に島状に正常皮膚が残存することがあり、
それが特徴です。(dengue rash あるいはHerman’s rashといわれます)
○チクングンヤ熱
2~12日(多くは3~7日)の潜伏期間を経て発熱、発疹、関節痛が発症します。
特に関節痛が顕著です。
急性症状は2週間以内に回復しますが、関節炎は数カ月続くことがあります。
40~50%程程度で皮膚粘膜症状が出現します。
通常麻疹様紅斑であり、発熱1~5日後に上肢より始まり、顔面、体幹に拡大します。
丘疹、蕁麻疹が起こる場合もあります。
デング熱でみられる出血斑は一般には見られません。
○ジカ熱
発熱期から皮疹が出現します。
麻疹様紅斑で始まり、顔面、体幹より症状が拡大します。
デング熱、チクングンヤ熱との鑑別が困難場合もあります。
デング熱と比較し結膜充血がより明瞭であり、
チクングンヤ熱と比較し、関節痛が軽度です。
一般に上記2疾患と比較し、臨床症状及びその経過が軽度です。
通常診療で遭遇する可能性は高くありませんが、
海外からの帰国者などに発症する可能性もあるので注意しておきたい疾患群です。