2015/08/30
爪甲色素線条は爪に線状あるいは帯状の色素沈着をきたす疾患です。
臨床的には自覚症状のない色素沈着が主症状であり、
組織学的には良性の色素性母斑(ほくろ)場合から、
ほくろの癌であるメラノ―マの場合があります。
成人では爪甲色素線条の約6%がメラノ―マとの報告もあり、
臨床症状、ダーモスコピーの所見等から良性病変以外の可能性が
考えられる場合には厳重な経過観察や組織検査が求められます。
一方小児の爪甲色素線条は時にみられる疾患ですが、メラノ―マの報告はわずかです。
小児の爪甲色素線条の病態を明らかにすべく、
USAから報告された小児の爪甲色素線条30例のまとめを紹介します。
「A clinical, histopathologic, and outcome study of melanonychia striata in childhood」
18歳以下の爪甲色素線状30例の統計です。
27例が手指、3例が拇趾でした。
8例が3mm以上の幅、5例が爪甲の50%以上を占める色素線状でした。
Hutchinson sign(後爪郭あるいは側爪郭の色素沈着)は4例、
pseudo-Hutchinson sign
(爪母あるいは後爪郭にある爪甲色素沈着が透見され一見Hutchinson signに見える)は4例でした。
組織学的に20例がlentigo(黒子:孤在性のメラノサイトが増生し胞巣を形成しない)、
5例がnevus(母斑:メラノサイトが胞巣を形成する)、
5例がatypical junctional melanocytic hyperplasia
(孤在性のメラノサイトが基底層上層に、あるいはPagetoidに増生する)でした。
術後9例の再発がありましたが、進行性、浸潤性増生なく、
メラノ―マと診断するような病変はありませんでした。
以上の結果より小児の爪甲色素線状では良性の病変がほとんどであり、
多くの病変では保存的に経過観察すべきであろうと述べられています。
Chelsea Cooper et al. A clinical, histopathologic, and outcome study of melanonychia
striata in childhood. J Am Acad Dermatol 72: 773-779,
2015
今回の検討は欧米での検討であり、日本人の爪甲色素線状とは異なる可能性があります。
ただし、今回の検討で述べられているように小児の爪甲色素線状では、
色素線状の幅の大きさ、爪甲全体に対する病変の割合、Hutchinson signの有無
(pseudo-Hutchinson signとの鑑別)、爪甲の変形、その進展などを観察し、
生検を行うかを慎重に判断する必要があります。