2015/07/01
Arch Pathol Lab Medに掲載された論文を紹介します。
皮下脂肪組織内に好中球が浸潤するneutrophilic panniculitisの
組織学的鑑別を行っているreview論文です。
一般的に脂肪組織炎は炎症の主たる場をseptal, lobular, mixedに分け、
さらに浸潤する炎症細胞により分類します。
好中球浸潤が主体のlobular panniculitisでは脂肪壊死のタイプが診断の手掛かりになります。
Blue-grayな“ghost cell”はpancreatic panniculitis、好塩基性の
grungy debrisよりなるbasophilic necrosisはinfective panniculitisを示唆します。
Lipophagic fat necrosisやmembranous fat necrosisは特異的な所見ではありませんが、
membranous fat necrosisはよりtraumatic/factitial panniculitisにみられる頻度が
高いとされています。
血管変化もneutrophilic panniculitisの診断には重要です。
○Pancreatic panniculitis
急性あるいは慢性膵炎に伴う脂肪組織炎です。
壊死した脂肪組織ではghost cellが見られます。
逸脱した膵酵素により脂肪組織が鹸化し、異石灰化を起こします。
周囲には多数の好中球が浸潤します。
血管壁を通して膵酵素が逸脱しますが、血管病変はありません。
○α1-antitrypsin deficiency panniculitis
PiZZのgenotypeでは、protease inhibitorであるα1-antitrypsinの低下がおこり、
肺気腫、肝障害、皮下脂肪組織炎を呈します。
組織学的にはLobular neutrophic panniculitisです。
膠原線維や弾性線維が分解され、真皮網状層、脂肪隔壁内に脂肪組織が
見られる”floating fat” の像が見られます。
○Infective panniculitis
皮膚脂肪組織への直接の感染と、血流を介した感染(二次性)に分けられます。
病変が脂肪小葉、隔壁と広範に及ぶことが多く、好塩基性の壊死のため、
弱拡大でdirty appearanceを呈します。
壊死性血管炎、血栓などの血管障害も特徴です。
二次性の場合には病原体を含む血栓が見られることもあります。
特殊染色で病原体を確認することも必要です。
(Arch Pathol Lab Med. 138:1337-43. 2014)